夕飯、大豆と塩もみキャベツとソーセージのスープ、ポテトサラダ、ザワークラウト。
白ワインをあけて、ジャッキーカルパスを用意して、この部屋に住みはじめたときに買って以来ほとんど埃を被ったままのプロジェクターを引っぱりだして部屋を暗くして、アマプラで『テルマ&ルイーズ』を観た。明日から劇場で4Kリバイバル上映されるこの映画を、私は一度も観たことがなかった。女の自由についての——女の、不可能な自由についての映画。ミソジニストどもが(ミソジニスト「ども」という感じで映画は描いていた、どの男もどの男も)性=暴力の対象としてしか見ていない(そしてそれを自分でも内面化している)女の役割を棄てて、彼女たちはどんどん人間の顔になっていく。労働者のおっちゃんから奪ったキャップと盗んだカウボーイハットをそれぞれ被り、一瞬、人生の主導権を握りもする。それが当時のアメリカ社会でいかに不可能だったかを、彼女たちの逃避行すべてが犯罪になっていく様と、泣きたくなるような結末がみせつける。すこし前に見た『哀れなるものたち』が、とてもオプティミスティックな映画に思えてくる。すくなくともベラ・バクスターが摑み取った自由は、教育と仕事に裏打ちされていて、テルマとルイーズが摑んだような後戻りできない絶体絶命の自由じゃなかった。
だけど、ああ、車ってものは、あんなふうに運転することもできるんだ。道を切り拓いて進むための、頼もしい道具にすることができるんだ。いいなあ……。最近またしばらく車に乗っていない。