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すず、二日目。
午前中、行ってみたいと思ったままずっと行けずにいたギャラリー「舟あそび」に伺えることになった。ギャラリーのご主人の舟見有香さんと、珠洲焼作家の篠原敬さんに挨拶して、珠洲焼の作品を見せていただいたりしながら、すこし話した。舟見さんは、客人がいま何をしようとしているかすぐに察知して助ける能力をもつ、とても素敵なひとだった。篠原さんには、私はへんな質問をたくさんしたのに、そのぜんぶに篠原さんは真摯に答えてくださった。今年に入ってから、私は急に茶や焼きものの世界が気になりだし、それは惹かれるというよりどちらかというと嫉妬するような感じに近かった。人間の作ったものが、人間の作ったものなのに、言葉なしで平然とそこにあることに、納得がいかないような気持ちになっていた。そうして受けた衝撃をそのまま吐きだすみたいに私は喋ってしまったのに、篠原さんは「言葉は使いますよ、ひとに伝えるためでなく、自分に返すために」と優しく話してくださった。
それから篠原さんの窯とアトリエを見学しに行った。五月の地震のあとに再建が始まった煉瓦作りの窯は、まだ完成していないのに、威厳を深く深くたたえていた。手で触れられていないところがどこにもなかった。私は言葉が出なかった。

町中華の店でタンメンのお昼を食べたあと、作家宿舎へ送ってもらって伊藤さんの作るSE(夜の繁華街の雑踏の音)に協力して(飲み屋の呼び込み役)、そのまますこし昼寝した。 ぐずぐずしていた天気が午後からやっと晴れだして、商店街の坪野さんの店に買いものしに行ったら、コーヒーとチョコレートをご馳走になってしまった。買ったのは、この冬やろうと思っている刺し子のための道具。六月に取材させていただいた銀座美容室にも寄った。一見ひっそりして見えても実は元気な町で、みんな自分の仕事をしている。

夜はプレビュー公演。今回初めて台詞を読む高校生たち、飲み込みが早くて頼もしい。帰りはO垣さんが送ってくださる。