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ワークショップ『日記をつける三ヶ月』

下北沢にある日記のお店「日記屋 月日」にて、日記をつけるワークショップのファシリテーターを務めることになりました。三ヶ月間、仲間と一緒に日記を書き、読み、期間中に五回、集まって対話するワークショップです。書いた日記を販売することもできるみたいです(製本代別途)。

【このワークショップは、 とくに以下のような方におすすめです。】
・日記をつけている人 ・日記をつけ始めたい人
・日記をつけるのがなかなか続かない人
・つけている日記を、ほかの誰かに読んでほしい人
・日記を読むのが好きな人 ・自分の日記を本にしてみたい人
・日記の魅力を伝える「日記屋 月日」の活動に興味がある人

【概要】
時間:10:00〜12:00
第一回:7月2日(日)
第二回:7月30日(日)
第三回:8月13日(日)
第四回:8月27日(日)
第五回:9月10日(日)

場 所:BONUS TRACK ラウンジ
会場住所:〒155-0033 東京都世田谷区代田2丁目36号
定 員:15名
費 用:一ヶ月4,000円
※教材費込。 ※当ページにて全5回の三ヶ月分=12,000円(税込)をお支払いいただきます。 ※一ヶ月ごとのお支払いはできません。 ※参加者都合により、不参加日が出た場合のご返金についてはいたしかねます。
主 催:日記屋 月日

参加方法など詳しくは、月日さんのウェブサイトをご確認ください。
https://tsukihi.stores.jp/items/6470626a700833003427c15d


【私より】

 日記は、優しい形式です。
 私はひとりの生活者として、日記という器にずいぶん助けられてきました。初めて日記を書いた記憶は、小学生まで遡ります。『アンネの日記』に触発されて、『モモ』に出てくる亀のカシオペイアに語りかける文体で威勢よく始めたそれは、きっちり三日坊主に終わりました。  小説家の富岡多恵子さんが、「私生活と私小説」(講談社文芸文庫『表現の風景』所収)という文章のなかでこんなふうに書いています。「日記帳を買うひとの多くが、それを三日坊主に終わらせるのは「日常」を記す退屈と困難に降参してしまうからであろう」。ほんとうにそのとおりです。

 それでも日記に「助けられて」きたと感じるのは、一日一日を生きている限り日記はいつでも何度でも書きはじめることができ、いつ書きやめても、毎日書かなくてもよく、誰にも読まれなくてもよく、また、ほんとうは誰に読まれてもよく、そういう緩さのなかで書くことを、日記という形式がいつも私に許してくれたからだと思います。

 大人になってからは、旅日記をよく書くようになりました。旅に出ると私たちは日常とは違う目を獲得して、日常の中では見えていないものが見えるようになります。始まりと終わりがはっきりしていて、ゴールがわかりやすいことが、書こうという気持ちを後押ししてくれます。

 今回のワークショップも、三ヶ月というすこし長めの旅を参加者の皆さんと緩やかにご一緒するような気持ちで、臨めるといいのかなと思っています。ファシリテーターというのが何をする人のことを指すのか、まだよくわかっていないところもあるのですが、「旅のとも」という言葉が、近いような気がしています。

 日記を書くときと詩を書くとき、私の中に共通してあるのは「これを私が書かなければ、他の誰も書くことのないまま、これは過ぎ去って消えてしまうのだ」という、淡い寂しさのような気持ちです。一日ぶんの日記を書き終えるとき、私たちは一日という単位の旅の終わりを確かめて、それが溶けてなくなっていく寂しさに慣れ親しむのかもしれません(そうすることで「日常」の退屈と困難から解かれ、「助けられて」いるのかもしれません)。
 日記は、優しい形式です。一緒に寂しくなりましょう。