大学で授業をしたり、友達と山に登ったり、海辺を散歩したり、珠洲へ取材旅行に行ったりしているうちに、四月(残酷きわまる月!by T.S. Eliot)が過ぎた。調子はゆっくり快復しているような、のらりくらり蛇行しているような。友達と会っているときは心から楽しく笑うし、仲間と仕事の連絡を取り合っているときも水を吸った植物みたいに元気なのだけれど、ひとりで部屋にいるとどうもぽつねんとしてしまう。去年が夏から年末にかけて怒濤の忙しさだったから、かるい燃えつき症候群みたいなものかなあとも考える。部屋でひとりになれる時間がほしくてほしくてたまらない、というような時期がかつてあり、そういう時間を手に入れてうきうき自炊した時期もあったけれど、いまは話したいことを話せるひとがまわりにいてくれるのがとてもありがたい。ほんとうに私はわがまま。人間はどこまでもわがままになれる。おそろしいことだ。
人生の過渡期のきびしさなのかな、とも思う。それをようやく味わう日々も、やっぱりきっと私には必要なのだろうなと思う。ひとりひとり、毎日会えるわけじゃなくても大切なひとたちの顔を思い浮かべて、目を閉じて深呼吸すれば、夜はちゃんとよく眠れる。ひとりがうれしい感覚もやっぱりちゃんとこの手に感じ直したいけれど、うむ、焦らないぞ。書かなければならなかったものはなんとか草稿まで無事に書きあがり、編集者さんに渡せた。あとはこまかい手直しと推敲。きっとだいじょうぶ。